自分の社会
2005年2月2日●自分の社会
冬の感動はゆるぎないものである。
厳かな冬の光が景色を白く包む。
積もったのは、いつ以来だろう。
平日なので学生の僕には当然学校があるのだけれど、自転車で行くにはあまりにも億劫に感ぜられて――だってほら、寒いし、危ないし――バスと電車で向かうことにした。あ、でも、次のバスに乗らなきゃホームルーム間に合わない。現在六時四十分、こんなに早く家を出ようとしている少年が、七時半に目を覚ます連中より遅く学校に着くなんて、この感じ、大嫌い。
バス停につくと、三人の先客がまばらに立っていた。目を合わせるだけで声はかけず、適当な位置でバスを待つ。四人だけの朝の静寂が、舞い始めた白い光と絡んで清々しい。バスはもう予定を十分も過ぎている。考えてみれば、雪がこれだけ積もっているのだから当然だ。ホームルームは間に合わないなあと計算してからは、学校に行かずに何をするかを考えることにした。
十五分遅れで来たバスの中は混雑をきわめていて、ちょっとした社会が詰め込まれている感じだと思った。会社へ遅刻の電話をいれる社会人や、後ろの方で詰まっている女子高生達の喧騒が心地よい。バスは安全をとった運転で徐行を続けている。普段おおよそでしか見ていない景色も、白く染まるとまるで別の景色を見ているかのように新鮮で、飽きない面白さがある。
信号待ちのバスの窓の外では、ちょっとした工場の前で作業員と思われる中年達が、嬉々として雪合戦をしている風景や、小学生が連れ立って歩く姿が流れてゆく。あらゆる景色が、この車窓の小さな枠の中で愛おしく感じられた。穏やかな気持ちで、僕は行き先のない移動を続ける。とりあえず駅に行くとして、どこへ行こうかな。
駅は、いや、厳密に言うならば駅のあたりは、驚くほど電車を待つ人がいて、要するに駅のあたりと言ったのはこういうことなんだけど、文字通り人が溢れていた。溢れてはいたけれど、誰が指示しているでもなく自然と列ができていて、微笑ましさに胸が躍った。電車一本では冗談でも運びきれないほどの数で、ちょうどジェットコースターに並ぶ感じで、改札のあたりは仕切られているようだ。ここにいる全ての人が、一刻も早く目的地に着くことだけを考えている。同一の目的を持った自己中達が作り上げる、この不思議な秩序に心が安らいだ。ここは、平和だ。
僕はそこに混じることにした。
着くころには一時間目終わっちゃうけど、仕方ないか。
冬の感動はゆるぎないものである。
厳かな冬の光が景色を白く包む。
積もったのは、いつ以来だろう。
平日なので学生の僕には当然学校があるのだけれど、自転車で行くにはあまりにも億劫に感ぜられて――だってほら、寒いし、危ないし――バスと電車で向かうことにした。あ、でも、次のバスに乗らなきゃホームルーム間に合わない。現在六時四十分、こんなに早く家を出ようとしている少年が、七時半に目を覚ます連中より遅く学校に着くなんて、この感じ、大嫌い。
バス停につくと、三人の先客がまばらに立っていた。目を合わせるだけで声はかけず、適当な位置でバスを待つ。四人だけの朝の静寂が、舞い始めた白い光と絡んで清々しい。バスはもう予定を十分も過ぎている。考えてみれば、雪がこれだけ積もっているのだから当然だ。ホームルームは間に合わないなあと計算してからは、学校に行かずに何をするかを考えることにした。
十五分遅れで来たバスの中は混雑をきわめていて、ちょっとした社会が詰め込まれている感じだと思った。会社へ遅刻の電話をいれる社会人や、後ろの方で詰まっている女子高生達の喧騒が心地よい。バスは安全をとった運転で徐行を続けている。普段おおよそでしか見ていない景色も、白く染まるとまるで別の景色を見ているかのように新鮮で、飽きない面白さがある。
信号待ちのバスの窓の外では、ちょっとした工場の前で作業員と思われる中年達が、嬉々として雪合戦をしている風景や、小学生が連れ立って歩く姿が流れてゆく。あらゆる景色が、この車窓の小さな枠の中で愛おしく感じられた。穏やかな気持ちで、僕は行き先のない移動を続ける。とりあえず駅に行くとして、どこへ行こうかな。
駅は、いや、厳密に言うならば駅のあたりは、驚くほど電車を待つ人がいて、要するに駅のあたりと言ったのはこういうことなんだけど、文字通り人が溢れていた。溢れてはいたけれど、誰が指示しているでもなく自然と列ができていて、微笑ましさに胸が躍った。電車一本では冗談でも運びきれないほどの数で、ちょうどジェットコースターに並ぶ感じで、改札のあたりは仕切られているようだ。ここにいる全ての人が、一刻も早く目的地に着くことだけを考えている。同一の目的を持った自己中達が作り上げる、この不思議な秩序に心が安らいだ。ここは、平和だ。
僕はそこに混じることにした。
着くころには一時間目終わっちゃうけど、仕方ないか。
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