六面体の神秘

2005年9月16日
●六面体の神秘
本屋でルービックキューブを買った。この一文だけで察しのいい読者諸君ならばこれが計画的な購入ではなく衝動買いであることは予想できることである。しかしながら同行者、いや、立場的にはこちらが同行者であるのだが、とにかく一緒にいた者は不可解な指摘をした。曰く、「本屋でそれかよ」と。確かに本屋は本を売る場所で買う場所だから、本屋で本を買うのは妥当だし、本以外を買うのはおかしいかもしれない。すると同様にルービックキューブを妥当に買えるのはルービックキューブ屋だけということになる。しかしながらそんなものが無いのは一般常識を備えた人であれば問う必要のない問題であり、つまるところ問題ではない。要するにルービックキューブは妥当に買えないものであるから「本屋でそれかよ」という指摘は的外れということになる。ともあれ、2000円もしたこのルービックキューブをいかに有効利用するかは考え物である。正直なところレジに持っていった時点で2000円の価値を見出せない確信めいたものを抱いていたが、それでも買った。それでも、買ったのである。損するとわかっているのに買った、この心理現象はほとんどオカルトと呼んでも差し支えない。それほどまでに人間は謎を求めているのだろうか?と考えていくとそうでもないようだ。何故なら私はこのキューブを解き明かしたいのではなく、捻りたいだけなのだ。完成させるつもりは、毛頭、一切、無い。単なる手持ち無沙汰の解消としての立方体にすぎないのだ。また、完成させてしまった場合、一つの危惧がある。恐らく私はそれを、二度と触れられないのである。苦労して完成させたキューブをまた壊すのは恐怖である。そういうわけで一度完成させてしまったら触れなくなるのだ。そのため考えずにいじるというのが最もよい。しかしこの立方体に2000円の価値を見出すのは、難題であるといわざるをえない。そう、キューブを解くのと同じくらいに――。そうして私は頭を捻らず、キューブを捻り続けるのである。

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